#8-アフォーダンスの背景と三連休

エレノア・J・ギブソンさんの二時間だけのバカンスはどんな感じだったのか
清水淳子 2024.09.23
誰でも
新卒の頃に目撃してスケッチした2人で8人の子供を連れて歩く方法。

新卒の頃に目撃してスケッチした2人で8人の子供を連れて歩く方法。

音になる前の声です。こんばんは。

あまり考えすぎずに書くことが重要なこのニュースレター。何を書こうか、考えながらタイプしている。そうそう、今週は三連休でしたが、パートナーの武田俊が通院のため、私は家でイオちゃんとワンオペでした。でも私はワンオペという言葉のイメージが理解できるけど、自分が時間を過ごすにはしっくりこないので、イオちゃんと過ごす時には、1on1と呼んでみることにした。1on1は前職のYahoo! JAPANで働いてた時にインストールした概念とスキル。とても好き。「対話を通して、問題解決や気づきによるイオちゃんの成長をサポートする」そんな気持ちで過ごした方が、なんだか楽しめる。

とは言え、朝の6時から夜の7時半くらいまで、ずっと1on1は痺れる。朝の6時から夜の7時半までメンバーの話を傾聴し続けるくらいの集中力のエネルギー...!しかも対話の形式が、非言語なので、踊ったり歌ったりで、とても大変。我が家では今、平日5日は保育園に預けているが、生まれてから幼稚園に入るまでの3歳くらいまでは自宅保育がスタンダードなのよね。本当にすごく大変なことだと思う。私自身も幼稚園に入るまでは自宅保育だった訳だけど、正直あまり記憶がない。でもきっと、あれやこれや家族のみんなが色々な方法でお世話してくれてたのだろう。この三連休に体力を振り絞って読んだ絵本やおもちゃたち、将来はあまり覚えてないだろうけど、重要な感性のカケラになってると信じ、心を込めて、もいもいを読み続けるよ。

もいもいし過ぎて、ふにゃふにゃになって脳で、来週の授業の準備。多摩美で情報視覚表現論という座学を行なっている。2018年にスタートして今年で6週目。毎年同じ内容で行ければいいけど、毎年、去年の内容に不足を感じて、少しづつアップデートを試みている。強化したいのは『「経験」という考え方について、どのような歴史があったのか?』という部分。そのことを辿ろうと、エドワード・S・リードさんの『経験のための戦い』を読みなおす。悲観的な鋭い煽るような表現の言い回しが興味深く、日本語だったらこのような表現にはきっとならないだろうな、と思いながら、強く主張する態度に惹かれる。こんな人と話してみたいが、エドワード・S・リードさん1997年42歳で亡くなっている。今の2024年のメディア環境で間接体験に愚かに溺れる私たちを見たら、どんな辛辣な言葉で批評してくれたのか?聞きたかった。

経験のための戦い―情報の生態学から社会哲学へ

経験のための戦い―情報の生態学から社会哲学へ

そんな激しいエドワード・S・リードさんはどのように育ったのか?気になってみてみると、直接の師匠は、エレノア・J・ギブソンとなっている。アフォーダンスで有名なジェームズ・J・ギブソンさんではなく、エレノア・J・ギブソン。私はギブソンさんに研究者の妻がいたことを恥ずかしながら初めて知った。エレノア・J・ギブソンさんの人生を調べてみると、性差別が今よりも酷かったであろう1940年代に子供を産み、休みをとりながら、さまざまな苦労しながら研究のキャリアを続けていた。かなりタフなできごとを乗り越えている。そして、ジェームズ・J・ギブソンさんの『生態学的視覚学』をまとめるに当たって、大きな影響のある研究を一緒にしていたようだ。

生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る / J.J.ギブソン

生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る / J.J.ギブソン

13ページのまえがきの最後にこんなふうに書かれている。

特に、コーネル大学の心理学の名誉教授(the Susan Linn Sage Professor)であるギブソン(E.J.Gibson)は、たとえ彼女が書かなかったとはいえ、本書のために誠心誠意つくしてくれた。彼女は私の妻であり、重要な決定に対してはともにその責を分かつものである。本書になお残されてるいかなる誤りも私と同じだけ彼女もその責を負うものである。
生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る / J.J.ギブソン

さりげなくて気が付かなかった。真正面からの感謝とリスペクトというより、研究者としての責務を分ける厳しい態度が二人の信頼の絆を表してるような気もする。けど、もっとわかりやすい存在感あってもいいよな〜と。令和の日本の価値観から勝手に思う。日本でアフォーダンスは有名な概念だけど、その背景にあったエレノア・J・ギブソンさんの存在が話題に上ることは私の経験の中では今までなかった。特に悪気なく透明化されてるエレノア・J・ギブソンさんの存在と功労。本人たちは特に何も思ってないし気にして無いかもだけど、それでいいのかな?何だか勝手に切ないような悔しいような気がしたので、今日ここに書いておく。

エレノアさんの時代から80年経った訳だけど、相変わらず子供がいる生活と研究のバランスは本当に悩ましい。どんなふうに限られた時間と熱量を傾けることができるのか。

とりあえず来年、デザイン学会に子連れでチャレンジしてみようかなぁと思った。 前例があるといいのだけど、検索する限り、子連れ関連のTweetはまだ無さそう。他の学会は子連れチャレンジしてるポストが沢山なので、デザイン学会も増やしていきたい。

「デザイン学会 子連れ」でXで検索すると

「デザイン学会 子連れ」でXで検索すると

そんな感じで3連休おわり。
自分なりの二時間だけのバカンスを挟みつつ生き抜いていきたい。

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