#7-強いぞ、42億年分の生命のプログラム

「仕事と子育ての両立」を超えて、「地球と個人の時間軸の融合」みたいな気持ち。
清水淳子 2024.09.21
誰でも

ご無沙汰してます。音になる前の声です。こんにちは。

前に第5回目を書いたあとに、連続して書きたくなってきたものの、これはニュースレターなので、みなさんのメールボックスに直接届いてしまう…。なんとなく1週間くらい空けようかと思い、1週間あけたら、今度は書こうとしたことを忘れてしまって、気がついたら一ヶ月あいてしまった。自分の書くリズムとしてはブログの方が向いてるのかなぁと思いつつ、メールマガジンで続けてみます。あ、SNSリンクで辿りついた方はよかったら登録してみてください。不定期で清水の音になるまえの声が届きます✉️

あっという間に9月!でもまぁ、秋とは思えないような暑さが10月の終わりくらいまでは続くような気がしてるので、季節の変化は期待しない。去年は11月でも暑すぎて半袖の日があったなぁ。この夏は、ゆっくりできると思いつつ、育児含め色々とバタバタ。何とか乗り越え、やっと落ち着いてきたところで、大学の後期がスタート。このまま年末まで突入していく予感です。

2023年3月から今日まで、妊娠出産育児と駆け抜けてきたわけなのだけど、最近の悩みとして、とにかく欲望が湧かない。去年から本当に心身ともに強制的に厳しい状態にさせられたせいで、「今この地球に衣食住を満たされて生きてるだけで感謝…」という状態に設定されてる。欲望が漂白、ウォッシュ。この状態が本来の自分の姿ではないように思う。あれも欲しい、これも欲しい、もっともっともっと欲しい、とブルーハーツの夢の歌詞か。と思うくらいに色々あった欲望、ほとんどない。

これは、42億年を積み重ねて生き残ってきたDNAが、この令和でも生き残るためにホルモンレベルでコントロールしてくる感じがする。私が35年積み重ねて集めてきたミームによって形作られてきた欲望は、42億年のDNAの生存本能の欲望に押され気味。42億年と35年じゃ勝ち目がない。マミーブレインも後押しして、欲望はどんどんシンプルに。複雑な文化よりも、根源的な生活に目がいく。

この状態は、クリエイターにとっては嘆くべき悲しい状況なのか?正直なところ、グラフィックレコーディング始め、デザインの授業企画と実施、制作に関するアイディア出しに関しては、あまり影響はない。むしろ大学生の頃に戻ったように伸びやかで自由な発想で動けるような良さはある。ただ、目的に対して逆算する戦略的思考を要する作業は、動きが鈍い。例えば、原稿の構成や新しい書籍の目次がいつものように思い浮かばなかったりする。ままならない脳。強制的に変化された思考に危機感は感じまくり。

仕事のステージとしては、自分が今までやりたかったことを、いつでもスタートできる環境が整いつつあり、今も待ってくれてる人がいるという幸せな状況なのだけど、肝心の自分が、42億年の歴史を持つ生命の仕組みに巻き込まれてる。見た目は普通なんだけど、思考が太古に誘拐されてるような感じ。火の鳥のコスモゾーンの世界観レベルでどうにもならない拘束があるような。

何とか進めようとMacに向き合っていると本当に困ってきて、この状態を解除してほしいとしか思えない。だけど、10ヶ月のイオちゃんのお世話に戻ると、それでもいいか~?と思えてしまう。ただ、その受け入れそうになる気持ちを「赤ちゃんの笑顔は最高のご褒美」「成長する我が子は一生の宝物」「女性はやっぱりママとしての本能がある」といった表現で終わらせたくない自分がいる(終わらせればいいのに…)

私の悩みは、定型文的に書くと「仕事と子育ての両立」なんだけど、その言葉がイメージされる具体的な擦り合わせよりも、もっともっと深い言葉にできないテーマを感じている。42億年かけてプログラミングされた生命としての自分と、生まれてからここ35年で新しく獲得した関係性と価値観で動く自分。そのバトルのようなコラボのような。

生命を育てる壮大な仕組みを投げ込まれた自分も受け入れつつ、その仕組みとは全く違った背景で生まれた自分もなんとか消さずに生かしたい。その思考錯誤は「仕事と子育ての両立」を超えて、「地球と個人の時間軸の融合」みたいな気持ち。見た目は地味なんだけど、すごく壮大なことが起きていると思う。

そんな葛藤の中で生きつつ、最新参加したデザインのイベントをご紹介。

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newQが開催する「問い」と「概念」の祭典。発表者はハッピとハワイアンレイを身につけるというルールでした 渋谷パルコの最上階というロケーションなのだけど、町内会の寄合みたいになってて、でも問いや概念について全員真面目に考えてて、設定が最高にバグっててよかった。またやりたい。この1年、外出がしにくく、モニター越しに色々なことを考えることが多かったのだけど、問いフェスでは、リアルの空間の問いを浴びたの本当全然違ってよかった。音楽のライブで「生音はやっぱいいな〜」とよく聞くけど、それに倣い「生問いはやっぱいいな〜」と言い続けていきたい。

藝大の院に通ってた時に、須永先生から教えてもらった国際学会。2024年に参加してきた日本チームのプロセスや成果をたくさん聞ける会でした。2019年にNYとデンマークに行ったきり、コロナと妊娠出産で海外チャンスが遠くなってしまい、英語学習も遠くなってしまってた私。でもやっぱり世界は気になる。何かできる形で発信をできるように準備していこ〜と思えた良い時間。イオちゃんのトラブルでドタキャンになると怖いので、誰も一人で行ったのだけど、研究仲間たちが沢山来てて、同窓会のようになり嬉しかった。

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なかなか時間がない日々で、欲望も湧かずに引きこもりになりがちなのだけど、42億年の生命のプログラムに流されないよう、今までの38年分の自分の人生を生きられるように、どんどん外に出ていこうと思うので、外で会えたら沢山お話ししましょう!

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最後に、イベントの再告知です。

台風で延期になりましたグラフィックデザイナー長嶋りかこさんの刊行記念イベントの日付が決まりました。10月6日(日曜)15:30-17:30 聞き手&話し手&グラフィックレコーダーとして参加します。
子連れも歓迎の対話イベントですので、お時間が会う方は皆様是非!

下記、このイベントに関する個人的なエッセイ。

「デザイナーをやりつつ子育てってできるのかな?」
「できないんじゃん?だって私の会社だと子供ができたらみんな辞めてるよ」

これは大学を卒業した頃、2012年、25歳くらいに美大の友人と交わした会話。今でも鮮明に覚えている。自分の大好きなデザインを学ぶために10代を全力で努力して、親に高額な学費をサポートしてもらって、ようやくデザインの世界の入り口に立てたのに、子供を産むとしたら、あと10年くらいで仕事を辞める未来しかないなんて嘘でしょ?信じられない。そう思ったことを覚えている。

そんな時に気にしてしまうのは、自分と同じ産む性である女性の先輩クリエイターの生き方だ。確かに産んだクリエイターは公共の場に出ることが減って、産まないデザイナーは悔しいくらいに全力で活動して大きな成果を残していく。

本当にこの二択しかないのか?そう考えている時に、学生の頃からの憧れの存在である長嶋りかこさんの出産を知った。そのことは私にとって大きな希望であり、勝手ながら色々な心配もした。もしも、こんなに活躍されている方が、これからお目にかかることがなくなるとしたら、やはり女性クリエイターは産むか産まないかで、自分のクリエイティブ人生が大きく変わってしまうことを示されてしまうのではないだろうか。

でも長嶋さんは現場に立ち続けられた。その様子は一度も面識のない遠くの私にも様々なメディアを通して伝わってきた。そして、その事実は、去年の自分の妊娠出産時にも密やかに大きなお守りになっていた。長嶋さんは今もカッコよく現場に立ち続けてるのだから、きっと私も大丈夫。そう思わせてくれる先輩は多いようで、デザイン界だけでソートするとまだまだ少ない。本当に少ない。

そして今回、長嶋さんの妊娠、出産、育児、仕事への思いを描いたエッセイが発売された。予約して家に届いた日に一気読み。そこには「子供を産み、仕事を続ける」ということが、どれだけ複雑な状況に晒されているか、各個人で見えない重い荷物を抱えている状況か、その中でも生命の存在がいかに輝かしいか。自分が心の中で考えていたが、声に出すことができなかった内容が赤裸々に記録されていた。

すぐに御礼が言いたくなり、少しドキドキしながらメンションをつけて、インスタのストーリーに投稿した。その投稿を見つけていただいたのが今回のイベントのきっかけのひとつで、インターネットに感謝!打ち合わせの際に、長嶋さんが過去の私のインタビューを読んでくださり、下記の言葉に感銘を受けたと伝えてくださった。

『グラフィックレコーディングをすると、まずみんなグラフィックが描かれている紙の方を向くんですよね。向かい合うんじゃなくて、同じ方向を向く空間がつくられる。そして、そこに自分たちの意見が集まっているという認識がうまれ、「私」と「あなた」で話すのではなく、いったんグラフィックを介して話すようになる。「I vs You」じゃなくて、「We & We」になれるんです』

このイベントでは、今まで声にすることのできなかった自分の重い荷物について少し中身を見せあえるような場になるのが、本当に実験的。登壇者だけではなく、参加者みんなで話をする予定です。私はその時の声にならない色々な声をグラフィックレコーディングで記録しながら対話を進めます。

どんな場になるのか?想像がつきませんが本当に楽しみです。そして、まだまだ言葉にならないトピックと思いが3万字くらいあるのですが、それはまたの機会に。開催は日曜になりますが、気になる方、みなさま是非ご参加ください。

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ここで終わり、みなさん、またどこかで👏 あ、SNSリンクで辿りついて、最後まで読んじゃった方は、きっと面白いと思うので登録してみてください。(2回目)不定期で清水の音になるまえの声が届きます✉️

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